高齢者が亡くなる原因が変わりつつあります

梅雨前線と低気圧の影響で、鹿児島や宮崎で激しい雨による土砂災害が発生しているようです。去年7月に倉敷市真備町を襲った豪雨災害を思い出してしまいます。みなさまも避難勧告が出たら迷わず避難してくださいね!!

本題に移りますが、先日高島忠夫さんが逝去されたという訃報が流れました。謹んで故人の冥福をお祈りいたします。発表された原因は「老衰」ということです。人間いつかは人生の幕を閉じる時がくるわけですが、その死因をみてみますと、1位、2位はここ20年ほど不動で、1位「悪性新生物(がん)」、2位「心疾患(高血圧性を除く)」ですが、2018年の統計調査では3位に「老衰」がランクインしたということです。実はこの結果は医療関係者にはちょっとした驚きをもって迎えられました。

何故かというと、去年の統計調査結果によると1位、2位は変わらずで、3位は「肺炎」でした。そのほとんどは高齢者による「誤嚥性肺炎」が原因だということですが、では最近になって肺炎(誤嚥性肺炎)が原因で亡くなる高齢者が減ったという事でしょうか??

実はそういうわけではありません。

病院や高齢者施設などの現場では、相変わらず肺炎(誤嚥性肺炎)は高齢者の死の間際に発症する疾患です。ですが肺炎で亡くなるというよりも、加齢変化によって肺炎を克服できないくらい衰弱していることが死亡の直接的な原因だ、ということは前々から言われていましたが、肺炎(誤嚥性肺炎)が死因として診断書が作成されていました。ところが、2017年に日本呼吸器学会から発表された「成人肺炎診療ガイドライン2017」において、高齢者の肺炎のうち、誤嚥性肺炎を繰り返す患者、老衰状態の患者には「個人の意思やQOL:Quality of Life を考慮した治療・ケア」を重視する。という文言がフローチャートに盛り込まれています。

これは、高齢者施設や病院で誤嚥性肺炎を繰り返す場合は、患者さんやご家族の意思を尊重して、積極的治療をしないという選択肢が示されている、と解釈されています。また、以前のブログにも載せましたが、薬剤耐性(AMR)菌のことを考慮すると、「高齢者の肺炎治療では抗菌薬の投与によって生命予後は改善するが、QOLが改善するわけではない」というデータもあるため、抗菌薬の投与に慎重な意見が多く寄せられていることもあるようです。

結果として、死因に「肺炎」という病名を記載するケースが減り、相対的に「老衰」が増加している、と思われます。

(厚生労働省 平成30年人口動態統計月報年計(概数)の概況 より抜粋 「主な死因別にみた死亡数(人口10万人対)の年次推移」)

だからといって、高齢者施設や病院などの現場ではいまのところ何も変わりはありません。そして訪問歯科診療の大きな役割でもある「誤嚥性肺炎の予防」が全く無意味だ、ということを示しているわけでもありません。むしろ、誤嚥性肺炎を契機にしてQOLが下がることがないように、穏やかに過ごしてもらうためにも、訪問歯科診療や口腔ケアの役割は大きいと考えられます。そもそも肺炎にならないように、フレイル対策の必要性が増してきていますので、訪問歯科診療で行えるフレイル対策に重点を置いて今後も取り組んでいきたいと思います。(骨太の方針2019にもフレイル対策と明記されています。)

前回投稿した翌日から「抗加齢医学会総会」に出席してきました。本当はすぐにでもシェアするつもりでしたが、またの機会にシェアしたいと思います。先延ばしになりすいません・・・

最後まで読んでいただきありがとうございます^^