口腔機能の正常な獲得と喪失

いよいよ平成最後の日。明日から新元号「令和」となります。新しい時代を迎えるという歴史的な瞬間を控え、あらためて日本という国に所属している自分を感じることができ、当たり前であることがこんなにもありがたい事なんだなと、感謝でいっぱいです。

さて、先日ブログを更新しようと思って途中で急用がはいり、それ以来滞っておりましたが、なんとか平成のうちに更新することができました^^ 今回はタイトルにもあるように、口腔機能の獲得と喪失についてです。口育はいまのところ「正しい口腔機能の成長を育む」ということでしたので、今回は「獲得した機能の喪失」も含むため、口育シリーズには入れておりませんが、内容はほぼ口育です。連続して口育関係でしつこいようですが、今後の日本の未来を守るため、子供の正しい成長は急務と考えていますので、お付き合いいただければと思います!

さて本題です。先日高齢者施設において、入所者さんの摂食嚥下(食事を摂取する一連の動作)について話し合っている際に、とある入所者さんについて職員さんから「段々飲み込みにくく、むせやすくなったが、ストローで飲むときはむせないようだ。」と意見がありました。

職員さんの話を聞いて、口育に関連して思い当たることがありました。その入所者さんは「乳児嚥下」に近い動作を行っているのではないかと思われます。ここでいう乳児嚥下とは乳児が行う嚥下というそのままな意味なのですが、ごっくんと飲み込む際の舌の動きが前後的な動きをするパターンの嚥下動作のことです。通常は離乳食を始める時期から徐々に乳児嚥下から成熟嚥下に発達します。舌の動きでいうと、前後的に限定していた運動(乳児嚥下)から、左右的・上下的な運動も加わり、通常は就学前には成熟嚥下を獲得します。

高齢者施設の入所者さんが、「ストローだと飲み込む際にはむせないようだ」というのは舌の動きがキーポイントだと思われます。詳しく述べるとやや難しいのですが、食べ物を飲み込むときには、通常は舌が口蓋(うわあご)に密着して喉の奥の方に食塊を送り込んで、嚥下の反射運動が起こります。高齢者施設に入所している多くの人は嚥下機能が低下しているため、スプーンで摂食する通常の食べ方だと、舌の拳上が不十分でムセてしまうことがあります。舌の拳上には喉頭(のどぼとけ)付近の筋肉が働いていますが、やはり筋肉ですので衰えてしまうのです。

いままで成熟嚥下が(特に上下的な運動)できていたはずですが、少しずつできなくなってきていたと思われます。

そこでムセやすくなってきたときに、乳児嚥下に近い動作を敢えて行わせることで、舌の拳上が不十分でも喉への送り込みがしやすかったため、ムセることなく嚥下できたのではないかと考えられます。もしくは、ストローを吸うことで唇がしっかり閉じますから、唇が閉じることで陰圧が保持できて嚥下しやすかったとも考えられます。

摂食機能障害があるひとは原因がそれぞれ異なりますから、ストローが嚥下機能が衰えた高齢者に有効かどうかは一概には言えませんが、ひとつの案だといえそうです。

長々とお付き合いありがとうございました。(令和元年5/1早朝編集)