むし歯予防・歯周病予防
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虫歯の予防について
虫歯(う蝕)の4つの原因
1.歯の質:歯の質を強くする
歯の表面を、虫歯菌(ミュータンス菌)の出す酸に負けないように強くすることです。ミュータンス菌は糖分を栄養として繁殖し、その際にネバネバした物質と酸を作り出します。この酸によってpH(酸性の度合い)が低くなれば、歯の表面は少しずつ溶かされてしまいます。歯の表面にフッ素を作用させると、酸に強くなる作用がありますので、フッ素入りの歯磨き剤を使用したり、フッ素のお薬を塗布することで歯の質を強くします。
写真の詳細説明。卵の左半分には歯科医院でも使用するフッ素を塗り、右半分はなにも塗布せず、薄めたお酢(pH5程度の酸性)に静かに沈め5分経った状態。
右半分はブクブクと泡が出て表面が溶けているのに対して、左半分は泡がでていないのがわかる。フッ素の作用で、左半分だけ酸に強くなっている。
2.口内の細菌:お口の中の細菌(ミュータンス菌)を減らす
お口の中にはおよそ1,000種類もの細菌が定着しています。その中でも、ミュータンス菌と呼ばれる種類の細菌が特に虫歯の原因になることが分かっています。(厳密には、色々な菌のバランスが関係しており、一概にミュータンス菌だけが悪玉菌というわけではないですが、ここでは割愛します。)
そこでミュータンス菌を口の中からできるだけ除去してあげれば良いのですが、リステリンやモンダミンに代表されるマウスリンス剤ではあまり除去できません。ミュータンス菌が産生するネバネバ物質は、さらに多くの細菌がまとわりついて細菌の塊となり(これをプラークといいます)、プラークは歯に強固にこびりついていますので、歯ブラシや糸ようじなどで物理的に落とすのが効果的です。きちんと歯磨きをして、できるだけプラークを口内に残さないことが重要です。これをプラークコントロールといいますが、ご自宅でできる虫歯予防の要になります。
3.摂取する糖分:糖分の量より「頻度」を減らす
甘いものが虫歯の原因になるのは昔から知られています。先にも挙げたミュータンス菌は、糖分を栄養として繁殖し、ネバネバ物質と酸を作り出し、やがて歯の表面にプラークが形成されます。
ここで多くの人が勘違いしているのですが、糖分の量よりも、その回数・頻度が重要です
糖分というとチョコレートやケーキなどを想像すると思いますが、普通のお食事においても糖分は含まれています。味付けに砂糖を使う料理は数多くあります。また、ここでいう糖分の摂取頻度とは、食事・間食に加えて、飲み物も勘定することになります。
「甘いものは好きではない」という男性が、虫歯ができて来院されることがありますが、よく話を聞いてみると、仕事の合間に砂糖の入った缶コーヒーを飲んでいた、なんてこともあります。この場合、食事の回数にプラスして、コーヒーを口にする回数(飲んだ本数ではない)をすべて勘定すると、かなり糖分を頻繁に摂取していることになりますので、それが原因で虫歯ができた可能性が高いのです。
最近はペットボトルで手軽に飲み物を摂取できますが、一気飲みする方はあまりいませんよね?
コーラに代表される炭酸飲料はものすごい量の糖分(およそ10%。500mlのペットボトルで約50gの糖分!)が入っています。100%果汁や野菜ジュースにも糖分はかなり多く含まれていますが、通常数回に分けて飲みますから、そのたびにミュータンス菌が繁殖し、歯が溶かされてしまうのです。
糖分は生きるのに必要なエネルギー源ですが、口にするたびにミュータンス菌に餌を与えているのと同じことですから、なるべく摂取頻度を減らしましょう。これをシュガーコントロールといいます。
1日3食の場合のステファンカーブを示した図。
1日3食にプラスして間食を数回摂取した状態の図。
図の詳細説明。赤いカーブは、ステファンカーブと呼ばれる、1日のお口の中の酸性度合いの変化を示したものです。
下半分の緑色の領域は、歯のミネラルが溶け出してしまう領域。上の白い部分は、歯のミネラルが回復する領域。専門的に、歯のミネラルが溶け出すことを脱灰(だっかい)、反対に溶け出したミネラルを修復することを再石灰化(さいせっかいか)と言います。
1日の中でも、歯は脱灰と再石灰化を繰り返しています。1日3食程度であれば、脱灰しても再石灰化が多く働きますので歯はすぐには溶けません。しかし、間食が多くなれば脱灰の方が多くなり、徐々に歯のミネラルが失われザラザラした表面になり(初期虫歯の状態)、どんどんミネラルが失われるとついには穴があく。これがむし歯発生のメカニズムです!間食は甘いおやつに限りません。図では分かりやすくおやつにしていますが、糖分を含むものであればほぼすべてミネラルが溶け出すと考えてもらったほうが良いでしょう。水やお茶、ノンシュガーのコーヒーや紅茶ならば問題はないと思います。
4.歯を磨かない時間:毎日「正しく」歯磨きをしましょう
歯磨きの習慣に関しては、多くの人が勘違いしていることがありますので先に訂正しておきますと、食後直ちに歯磨きをするのは、あまり好ましくありません。最近になって雑誌やTVでも取り上げられるようになりましたが、食後は唾液の力で溶けた歯の表面の修復(これを再石灰化といいます)が行われています。せっかく再石灰化が行われているのに、すぐに歯磨きをしてしまうと唾液が洗い流されてしまいます。近年の研究によりますと、食後30分間は歯磨きをしない方が良いとされています。
(※ 唾液が出にくい人は、食後早めに残った食渣やプラークを除去したほうが良い場合もあります。詳しくは担当医にご相談ください。)
食事に限らず、糖分を含むものを摂取すると、ミュータンス菌などの働きで口内は酸性に傾きます。酸性に傾いた口内のpHは唾液が中和してくれますから、ここで大事なのは、唾液をしっかり出すということです。
アルコールを含む種類のマウスリンス剤は、アルコールの作用で粘膜がダメージを受けるのに加え、口内の乾燥を引き起こすことがあります。食後の喫煙もNGです!喫煙はお口の中の乾燥につながり、酸性に傾いたpHの中和が行われにくくなります。食後はつまようじなどで食べかすを取り除く程度にとどめ、ガムを咬んだり、フリスクなど刺激のあるタブレットによってしっかりと唾液を出すことが良いとされています。このように、口内を唾液で潤わして、再石灰化が積極的に行われるようにするのもとても大切なのです。
虫歯(う蝕)予防のまとめ
上記4つの原因に対する対策を1つずつ行えば良いのですが、歯の質や口内の細菌バランスにはそれぞれ個人差があります。
全くプラークコントロールができていないのに虫歯になりにくい人もいますし、シュガーコントロールを心がけても虫歯になってしまう人もいます。歯並びがキレイかガタガタしているかにもよりますし、それぞれに異なるリスクがあり、自分では気づいていない習慣が隠れていることもあります。もちろんここに書いてあることが全てではありませんし、ご自分で判断するよりは、ここでみた情報をもとに歯科医院に足を運んでもらえることが一番大切な行動です。
ある有名なビジネス雑誌で健康に関するアンケート調査が行われました。一線を退いた会社員男女1,000人に対して「健康で一番後悔していること」という回答で最も多かったのは、「煙草をやめればよかった」「スポーツなどで鍛えていればよかった」などをおさえ、「歯の定期検診を受ければよかった」が堂々の1位だったそうです。
「歯医者は痛くなってから行く病院」という考え方は、そろそろ変えた方が良い時期ではないでしょうか?皆様の勇気ある一歩を応援しています!